私を愛するその人は、私の向こうに別の女（ひと）を見る

　てきぱきと私の物を部屋に運び込んだ瑞斗さん。私は言われるがまま、彼の部屋で荷物を受取り、それをリビングで整理してく。

「これで全部かな」

　彼がそう言った頃には、リビングの隅に小さな私の部屋が出来上がっていた。

「えっと……服は、クローゼット、使って？」

　彼は徐ろにハンガーに掛けたままの服の束を持つと、そのまま廊下の先へ向かう。私も慌ててその後を追うと、そこは寝室だった。
　瑞斗さんがクローゼットを開くと、瑞斗さん特有の甘い匂いが溢れた。

　目をつぶり、その空気を吸い込む。
　心臓がドクドクと高鳴った。

　本当に、彼の部屋に、来ちゃったんだ。

「えっと……ここは、寝室。あと、バスルームとトイレは、あっち」

　そのまま部屋を案内する瑞斗さんについて回ると、もう一部屋残っていることに気付いた。

「ここは……？」

「そこは、書斎。汚いから……あんまり、入らないで」

　首に手を当てて照れたように笑う瑞斗さんは、そう言うとそのままリビングへ行ってしまった。