私を愛するその人は、私の向こうに別の女(ひと)を見る

4 家でもスパダリな彼

 それから二人で買い物に行き、おそろいのカップや食器を買った。

「私の持ってきたのもあるので……」

 そう言ったのだけれど、瑞斗さんは「せっかくの同棲だから」とウキウキしながら色々選んでくれたのだ。
 その後はカフェでランチをして、夕飯の買い物をして家に帰ってきた。

 そして今、これも先程おそろいで買ったエプロンをして、キッチンに立っている。

「瑞斗さん、料理もされるんですね」

「まあね。これでも、一人暮らし長いから」

 へへっと笑う瑞斗さんは、私が皮を剥いた人参をトントンと軽快に包丁で切っていく。

「紗佳も手際いいね。まだ若いのに」

「うち、父子家庭だったんです。だから、料理は小学生の頃から、私が……」

 そう言うと突然包丁の音が止まる。私は隣の瑞斗さんを振り向いた。

「……ごめん、なんか」

「いえ。別に、私にはそれが普通だったので」

 肩を落とす瑞斗さんを安心させたくて、私は慌てて笑顔を作った。

 私が、出てきてしまった。
 彼が見ているのは、私じゃなくて、“アリサ”さんなのに。

「そっか」

 瑞斗さんがそう言ったときにはもういつもの笑顔に戻っていて、私はほっと安堵の息を漏らした。
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