エリート外科医と再会したら、溺愛が始まりました。私、あなたにフラれましたよね?
椅子から腰を浮かせ、前のめりになる相良さんに気づかず視線を落としていると、いきなりデコピンされた。

「ちょ、なにするんですか」

「ぷっ、お前、なんて顔してんだよ」

「え?」

人差し指で弾かれた額を抑えながら見ると、彼はクスクスと噴き出して笑っている。

なんて顔って、私、そんなひどい顔してた?

「今、ちょっと嫉妬しただろ?」

私の心を見透かすように、クイっと口の端を押し上げてじっと私を見つめる。

「お前が試すようなこと言うから、俺も試すようなことを言ってみた。ほんと相変わらずわかりやすいやつ」

「も、もう……嫉妬だなんて、由美は友達で――」

「あのときのキス、まだ残ってるんだろ? 正直に言ってみろよ」

相良さんの澄み切った茶色の瞳の中に、ぽかんとした自分の顔が見えるようだ。彼の口から“キス”という単語が出ただけで、一気に心拍数が上がった。

「あの、もう帰らなきゃ!」

言い迫られているような雰囲気に耐えかねて勢いよく椅子から立ち上がる。そして、ソファーに置いたままのバッグを手繰り寄せようとしたら、その腕を取られてしまった。
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