可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
 朝食は洋食。

 焼きたてパンとふわふわのオムレツ、新鮮なサラダやフルーツとしぼりたてのオレンジジュース。
 この宿の佇まいと同じで、派手さはないけれど、どれも極上の美味しさだった。

 でも、食事が終われば、この天国から出ていかなければならない時刻が迫ってくる。

 別れのときを意識すると、ぎゅっと胸を締めつけられたように苦しくなる。

 もちろん口には出さないけれど、今度こんな休日を過ごせるのはいつになることかと、心は寂しさに占領されてゆく。

 それは宗介さんも同じだったようだ。

 支度を整えて迎えの車を待つあいだ、いつになく切ない表情を浮かべた彼は、わたしを抱きしめ、ささやいた。

「一日でも早く、おおっぴらに郁美と会えるように、今は必死に仕事するから」

「うん。わたしも宗介さんに負けないように仕事、頑張る」
< 106 / 185 >

この作品をシェア

pagetop