可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
「宗介さん、髪、洗うの上手」
 手つきの湯桶でシャンプーをすすいでくれる宗介さんに、わたしは話しかけた。

「前に美容師の役をやって、指導を受けたことがあるから」

「俳優って大変だね。なんでもできないといけないのだから」

「いや、カメラワークや編集でなんとかなるもんだけど。でも俺はせめて、観てる人が興ざめしない程度には本物に近づきたいと思ってやってるから」

 彼のこうした、演技に真摯に取り組む姿勢が今の大ブレイクに繋がっているのだ、とわたしは思う。

「顔だけ」と批判する人もいるけど、決してそんなことはない。

 彼は努力の人だ。
 いつだって演技力を磨く努力を惜しまない。

 実はそういうところが、彼を好きになった大きな理由のひとつであるのだけど。
 
 わたしも「背中を流してあげたい」と言った。

 けれど、彼は「姫にそんなことさせられない」といって、自分で素早く身体を洗い、わたしの手を引いて、脱衣室に行った。
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