もっと求めて、欲しがって、お嬢様。




「そういえば理沙の婚約者……、えっと、佐野さまは…?来ないの?」


「…どうだったかしら」


「えっ、把握してないの…!?」



流すようなほほえみで返した。


このまま音楽と生徒たちの賑やかさに溶けてしまえばいい。

時間が経って、いつの間にかこんな舞踏会は終わっていればいい。



「あ、そうだバカエマ。前に言ってたプレゼントって何だったのよ」


「へ?」


「ほら、あったじゃない。私のマンションに来たときの」



あなたが盛大に邪魔をしてくれたときだ。

………邪魔?

なに考えてるのよ、私ってば。
バカじゃないの…。


あれからいろいろバタバタしていて、エマからそれを貰えていなかったことに気づいた今。



「あっ!そうそう!今日渡そうと思ってたの!!はいっ、どーぞ!」


「…四つ葉のクローバー、」


「うんっ!幸せになれるよ理沙っ!!」



その日に取ったのだろう四つ葉は、すでにしおりにされていた。

笑顔で渡してくれるエマは、誰かに幸せを与える力がある女の子。



「…ありがとう。大切にするわ」


「やったあっ!また“ありがとう”って言ってくれたっ」



四つ葉のクローバーは幸福のシルシ。

それを見つけて渡してくれる、私の友達。



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