もっと求めて、欲しがって、お嬢様。
時間が、ふわっと止まった。
言葉の意味を理解しようとすると気持ちはどうしてか落ち着いて、涙は引っこんでしまったと思ったのに。
「っ…、」
どうしようもできない気持ちと、どうにかでもしたい気持ち。
溢れては頬にひとつひとつ流れてゆく。
けれどそこには確かな気持ちがあった。
うれしい、なんて思ってしまったこと。
こんなの……言えるはずがない。
「…すみません、困らせてしまいました。このままでは目が腫れてしまいます。ホットタオルを用意してきますね」
「いやっ、行かないでっ」
「……理沙お嬢様、」
初めてだった。
本心だろう言葉が飛び出して、引き留めるように私から掴んでしまったのは。
そもそもあんなに怖がってたのにリビングまで行けるの…?
「…これくらい…平気だから。あなたがいなくなると、寒いのよ、」
「…わかりました。……ではもう少し、くっついてもよろしいですか…?」
「っ、か、勝手にすればいいでしょ、」
考えたくない。
もうすぐやってくる、
今年は佐野様も参加すると言っていた、聖スタリーナ女学院の伝統行事───舞踏会のことなんて。