このキョーダイ、じつはワケありでして。




私から学ぶ?
なにを??と、正直に返してしまいたい。

私がたった今考えていた気持ちとまったく同じものを天瀬が思ってくれていたとすれば、にわかに信じがたいことだ。


ただ、答えたのは天瀬だけ。



「別にこれは強制じゃないからいいんだよ。少しでも怖いとか重いとかさ、面倒って感じたら正直に言ってくれて。ただその場合は……金輪際俺たちに関わるなとだけは」



背筋が際立つ。

特別注意されたわけではないのに、自然と姿勢が伸びる。


兄が持つ穏やかでコーティングされた中に隠れた本物の冷徹さが、一瞬だけ頭角を現したのだ。



「に、にいちゃ……」



おかしかったんだ、最初から。


咲良以外の人間を家に上げることなんかまず無くて、私以上に兄のほうが警戒心が基本つよい。

他人に対して一線を引くのはいつも兄ちゃんだった。


でも今日、天瀬と先輩を快く家に上げたのは私じゃない。


戸惑う私をそのままに、立ち上がった彼は隣の襖をゆっくり開けた。



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