このキョーダイ、じつはワケありでして。
「─────………え……」
どちらの声だっただろうか。
初めてすべてを知った先輩か、実際にそうなんだと物理的に理解したクラスメイトか。
重なった声はよく似ていて、区別が付けられないくらいに小さな反応だった。
「俺たちの両親。…事故でね、5年前に」
写真のなかに生きるふたりは、いつ見たって変わらない。
私と兄ちゃんだけがどんどん年を取っていって、いつか両親のことすら追い抜かしてしまう日が必ずくる。
「母さん、父さん。慶音がさ、こんな友達いっぱい連れて楽しそうにしてるのなんか初めてだよ」
仏壇の前、必ず兄はそうやって話しかける。
私がテストで100点を取ったとき、先生に褒められたとき、空手の試合で入賞したとき。
自分のことはそこまで話さず、私のことばかりを嬉しそうに報告するんだ。
そして、そっと振り返る。