このキョーダイ、じつはワケありでして。




「まあ…そういうこと。だから物が少なくて、ふたりにしてはちょっと広すぎる家なんだ」



私も兄ちゃんもインテリアにこだわるタイプじゃない。

キッチンも必要最低限の調理器具しかないし、付属のオーブンなんか滅多に使わない。


庭もそのまま。
人工芝のため、草むしりもしなくていい。


そういえばふたりきりになってからバーベキューもしていなかったね。



「他の、親族とかは…」



震えた声の天瀬。

安心させる微笑みセットで、兄が形のいい唇を開く。



「みんな県外。いろいろ話は上がってたんだけど、俺がこいつと暮らすって言って引き取った。…祖父母ともあまり関わってこなかったから、本当にふたりだけだよ」



これは兄の自慢にしていいこと。

とくに鼻高々に豪語せず、サラッと当たり前のように伝えてしまうのが兄ちゃんなんだけど。



「だからって俺たちは不自由してないし、寂しくもないし可哀想でもない。…ね、慶音」



ぽんぽんと、みんなに見えないところで優しく叩かれた背中。

「うん」と、私もおなじ優しさで返す。



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