このキョーダイ、じつはワケありでして。
どんなに近所の人間たちに噂されたって。
どんなに学校で言われたって。
いつもそばにいて、一緒に笑いあって、ときには泣いて喧嘩して、そうやってふたりで今も生きている。
「────はじめまして」
以外な人物の行動に、思わず注目だった。
仏壇の前に近づいて、そっと腰を下ろした男は。
穏やかでせつなそうな顔を浮かべ、ひとつひとつ自己紹介を始めた男は。
「俺、慶音さんとおなじ学校で先輩の緒方 志摩っていいます。じつは学校ではいつも守ってもらってるんです俺。でもこれからは…俺も慶音さんを守ってあげたいな、なーんて」
こんなこと思いたくないけど。
嘘をついている感じがしなかった。
「よかったね」
私の頭をくしゃりと撫でた兄は言ってくる。
そうやって手を合わせられる人だったんだ。
そうやって、写真に向かって笑顔を見せられる人だったんだ。
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、先輩のことを見直した。
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