このキョーダイ、じつはワケありでして。
志摩side




「ふはっ、面影あるわー。あるある、これなんてまんま慶音」


「…まんまではないです」


「だってこれ、この睨み加減だよ?ただの慶音じゃん」


「…………」



ほら、今とまったく一緒。

ちがうのは身長と体重くらい、なんて言ったら殴られそうだから言わないけど。


昔の写真が見たいと言ったのは俺だった。


戸惑いながらもアルバムを出してくれたのはお兄さんで、「これくらいしか簡単に見つかるものはなかった」と。



「これ5歳の誕生日だよ。なんか手作りでケーキ作ってさ。ほら、おまえが生クリームだらけになったとき」


「…兄ちゃん覚えてる?」


「もちろん。そのあと俺にも付けられたから」



すぐに出せるアルバムと言っていたけれど、実際はこれが全部なんだろうと思う。

兄と妹がちゃんと写っているものは。


単純に8歳という歳の差が大きく関係しているかもしれないが、俺が確かめたいことはそこじゃなかった。


やっぱり“その前”が、ない。



< 124 / 315 >

この作品をシェア

pagetop