このキョーダイ、じつはワケありでして。
「あ、これ咲良ちゃんもいる。小学校の入学式じゃない?」
「ほんとだ!懐かしいね慶音ちゃんっ」
「うん。咲良、この頃からかわいい」
「えっ、慶音ちゃんもかわいいよ…!」
保育園、小学校。
運動会での写真や、家族だけの写真。
8歳も離れていれば物理的にすれ違うときは必ずあるから、だんだん兄妹のものが減っていったとしても驚くことはない。
なら、もっと前の写真であればたくさんあるはずだ。
(……やっぱりだ)
成長するにつれて兄妹の写真が少なくなっているだけじゃなく。
慶音がもっと赤ちゃんの頃や、慶音がまだ生まれていない時代の家族の写真が1枚もアルバムに綴(と)じられていなかった。
「人のアルバム、そんなに面白いですか」
「…うん。見てこれ、大泣きだよ慶音」
懐かしさを感じさせる畦道(あぜみち)のような場所で。
麦わら帽子、虫かご、虫取り網。
夏という夏を身につけた小さな妹と、歳の離れた妹にすべて持たせている手ぶらな兄。
ふたつの手はしっかりと繋がれていて、大泣きの妹を引っ張る兄は無邪気に笑っていた。