このキョーダイ、じつはワケありでして。




「兄ちゃんのおかげで慶ちゃん、こんなに大きくなりました。つぎの試合では必ずベスト8に入ります」


「…天瀬くんよりいい結果残そうか」


「……やっぱ私が負けて悔しかった?」


「当たり前。おまえ以上に負けず嫌いなんだよ俺は」



11歳の頃はこうしてもらうことが大好き。

12歳、ちょっとだけ恥ずかしくなって背伸びをしようとしたけど失敗。


13歳と14歳は、素直に甘えることができなくなった。

15歳、もうそんなのしたって仕方ないと開き直った。


そして16歳の現在は、1周まわって今まででいちばんの甘えん坊かもしれない。



「今日の夕飯、手巻きね」


「え、リッチだね。お給料日?」


「でもないけど。今日は妹とゆっくりしたいんだ、兄ちゃんも」



私に対する隠し事が減ったからか、どこか安堵の顔だった。

あんなこと言われたくらいで兄ちゃんのこと嫌いになるわけないのに。


私も今日は兄ちゃんとゆっくりしたい。

まだまだいっぱい聞きたいことがある。



< 152 / 315 >

この作品をシェア

pagetop