このキョーダイ、じつはワケありでして。
の、はずだったのに────。
「成海くん今日手巻き!?マジ!?すげェうまそう!!慶音ちゃんもまた大きくなったなー!」
「……テツ、空気読もうぜ」
「えっ、慶音ちゃんキレてらっしゃる……?そんな口調してた…?」
キレてらっしゃるに決まってる。
ふたりで手巻き寿司。
エビ、マグロ、サーモン、イカ、いくら。
昔話に花を咲かせて、兄妹水入らずゆっくりする予定だったのに…。
「なんで今日なのテツ。これから兄ちゃんとふたりで楽しい楽しい手巻きだったのに……、よーし、とつげきー」
「ごふ…っ!!ひええっ、慶音ちゃん会うたびに成海くん2号にしか見えねえ……!!」
「そりゃ俺の妹だからね。でもほんとテツ、今日はいつも以上に空気読めなさすぎ。もしかして狙って来た?図々しすぎだろ」
「いやいやたまたまだって…!マジで本当に切実にっ!!」
こいつは哲明。
兄とはもう10年近くの仲になるらしい男。
兄ちゃんはずっと「テツ」って呼んでいたから、私もいつの間にか定着してしまった。