このキョーダイ、じつはワケありでして。
初めて会ったのは11歳の頃。
当時からうるさい男だとは思ってたけど、5年経った今もさほど変わっていない。
「テツ、おまえが巻いていいのきゅうりとアボカドのみだよ。あと米ね」
「こら慶ちゃん。米って言い方やめなさい」
「いや成海くん、それ言うなら年上に“おまえ”ってところも教育したほうが…」
「え?おまえはおまえなんだから問題ないだろ。あ、ツナマヨはテツにやっときな慶音。こっちにエビあるよ」
「あ、エビたべる」
「…………」
結局こうなるオチ。
まあテツには11歳の頃から遊んでもらったりしてるし、いろいろお世話にもなってるし…。
昔の関わりをすべて切った兄ちゃんが唯一切らなかった、切れなかった男でもある。
つまりテツは警戒心の強い私たち四宮兄妹にとって、信頼できる男だってこと。
「あのう、ちなみに俺は刺身とかって……」
「「逆になんでいけると思った??」」
「……ダヨネ」
最終的には可哀想になって私も兄ちゃんも許しちゃうんだけど。
こうしてテツが顔を出すことは久しぶりだからか、兄も嬉しそうだった。