このキョーダイ、じつはワケありでして。
「おいテツ。余計なこと言ってどーすんの」
「ぐは…っ!ごめん成海くん…!」
「慶ちゃんおねがい。すぐ終わるから」
そこで慶ちゃん呼びはずるい。
聞くしかなくなる。
兄ちゃんの「すぐ終わるから」の言葉を信じて、リビングを出た。
仲間外れがいちばん嫌いなんだよ、私は。
「大方、前の話でしょ」
「あ、ああ。すこしは考えてくれたかなって…」
階段を上る手前、なんだか聞き慣れない掛け合いだけを小耳に挟む。
気になりながらも勉強に集中……できたらそれはもう勇者だ。
前の話って、なんの話…?
兄ちゃん、また私になにか隠し事してるってこと?
もしかしてどこか遠くに行くんじゃないかとか、私から離れるんじゃないかとか。
気になるぶん、いろんなことを考えてしまう。