このキョーダイ、じつはワケありでして。
「頼むよ成海くん。会ってやるだけでいいんだって!」
「会わないよ。そしたら受けるようなもんだろ」
「でもさあ、悪い話じゃないと思うんだよ俺も。たしかに成海くんより年上だけど周りからも美人って評判らしくて、もうみんな盛り上がっちまってるし…」
「売れ残ってる美人ってのは、何かしらのワケありって見方もできるじゃん。どちらにせよ俺は今は結婚なんか考えてないんだって」
まさかそっち系の話だったのか、と。
つい動揺してしまったことで呼吸が一瞬だけ止まった。
足音を消して気配を消して、階段を降りてからの盗み聞きをして正解。
「でもラクにはなるだろ?成海くんも働きながら妹の生活を立てるってのはさ、ぶっちゃけ体力的にもキツいだろうし」
「だからフリーランスにしたんだよ。一応それで成功してるし、稼ぎもある」
「だとしてもだよ。せめて料理くらい作ってくれる彼女?みたいな存在はあってもいいんじゃねェの。それに成海くん男前なんだし、マジもったいねえって」