このキョーダイ、じつはワケありでして。




「…おまえは俺に、本当にそうしてほしいの?」



倒れたテツに駆け寄ることなく、兄はとりあえずは昂った感情を静めながら言ってくる。

「うん」と、ハッキリ答えた。



「それを望んでるわけ?ここに他人が来ることを?」


「うん」


「…たとえそれがうまくいくことばかりじゃないとしても?」



うまくいかないなら、うまくいくようにすればいい。

上手くいくようにするよ私が。


あなたの苦労が今より軽減されることは確実なんだから、自然とうまく回るに決まってる。



「うん」



じっと、しばらくぶつかり合う視線。

逸らしたら負けだと思いながら見つめつづけた。



「はーー。…わかった、まずは会ってみるだけね」


「ほ、ほんと…?」


「俺はそこに今の幸せがあるとは思わないけど」


「あ、あるよ!ぜったいあるから兄ちゃん…!!テツやったよっ、兄ちゃん受けるって!!ごめんテツ起きて!!」


「………し、死ぬかと思った……」



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