このキョーダイ、じつはワケありでして。




お腹に食い込んだ蹴り。

立っていることはおろか、呼吸を繰り返すことすらままならなくなる。



「はっ……、ハッ、…は…っ!!」



落ち着いて、ゆっくり息を吸って。

そんなことできっこない。
苦しい、痛すぎる、なにも考えられない。


そういえばニュースでもやっていた。

高校生が不良グループに絡まれて集団リンチに遭った末、死亡したと。


ころ、される─────……。



「よーく覚えとけガキ。大人に楯突くとこうなるってことをなァ」


「おい、こいつ起きねえけど。あばら折れたんじゃね?」


「ギャハハッ!さっきまでの威勢はどうしたんだよ!!」



死んだふりがいいかもしれない。

かろうじて思考を動かせる脳は、必死に生存ルートを探していた。



「っ……」



情けない。
自分から吹っかけておいて、このザマ。

いつも私はそうだった。


良かれと思ってやったことは、ぜんぶ自分に返ってくるんだ。



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