このキョーダイ、じつはワケありでして。
空手の試合、天気が悪いのを知っていて「応援にきて!」と両親にワガママ言ったのは私だった。
うまくやれると思って「縁談受けよう!」なんて兄に言ったのは私だった。
なんにも、なにひとつ、笑顔の結果にはならなかったよ。
「もう放っとこうぜ。金だけでも盗ってく?」
「だな。つーかマジいてえ」
「おまえガッツリ蹴られてたもんな」
くやしい、悔しいくやしい、悔しい。
うずくまった場所に、ポタリポタリと染みができてゆく。
秋のつめたい風が「泣くな」と言うみたいに頬を撫でた───瞬間。
「ぐはァッ!!」
「うわ…っ!ごふッッ!!」
「おいなんだ───うが……ッ!!」
ひとり、ふたり、もうひとり。
閑静な住宅街。
ひとの寄らない夜の公園。
飲み込まれそうだった影がとつぜん開けたかと思えば、響いた鈍い音。