このキョーダイ、じつはワケありでして。




『お母さんとお父さんにも見せたかっただろうな…』



俺の横でぽつりと、テツはつぶやいた。


周りを囲む保護者たちはみんな、自分の子供の活躍を見ている。

本当なら母さんと父さんも微笑んで見守っていたはずだ。



『でもさ成海くん。慶音ちゃんは幸せだと思う』


『…なわけない』


『いいや。成海くんがいるから、悲しさはあっても寂しさはないって感じるんだ俺。…慶音ちゃんを見てると』



エジプトのピラミッド、空たかく上ってゆく飛行機。

俺のときあんなのしたっけ?なんて思いながら、ただ静かに見つめていた。



『成海くんと暮らせて、ぜったい感謝してるよ慶音ちゃんは』



それはさテツ、俺のほうがなんだよ。


俺のほうがあいつを必要としていた。
俺のほうが寂しかった。

両親とはもう2度と会えなくて、唯一の妹まで施設に行くことになって。


これからどうやって生きていこうって考えたときに。



< 243 / 315 >

この作品をシェア

pagetop