このキョーダイ、じつはワケありでして。
『お母さんとお父さんにも見せたかっただろうな…』
俺の横でぽつりと、テツはつぶやいた。
周りを囲む保護者たちはみんな、自分の子供の活躍を見ている。
本当なら母さんと父さんも微笑んで見守っていたはずだ。
『でもさ成海くん。慶音ちゃんは幸せだと思う』
『…なわけない』
『いいや。成海くんがいるから、悲しさはあっても寂しさはないって感じるんだ俺。…慶音ちゃんを見てると』
エジプトのピラミッド、空たかく上ってゆく飛行機。
俺のときあんなのしたっけ?なんて思いながら、ただ静かに見つめていた。
『成海くんと暮らせて、ぜったい感謝してるよ慶音ちゃんは』
それはさテツ、俺のほうがなんだよ。
俺のほうがあいつを必要としていた。
俺のほうが寂しかった。
両親とはもう2度と会えなくて、唯一の妹まで施設に行くことになって。
これからどうやって生きていこうって考えたときに。