このキョーダイ、じつはワケありでして。




『なんでいつも俺が慶音に“俺はおまえの家族だ”って言ってんのか分かる…?あんなの、ただ自分に言い聞かせてるだけなんだよ』



自分を安心させているだけ。

本当の家族じゃない、本当の兄妹じゃないと言ってくる周りの視線が怖くてたまんないから、見ないように隠したいだけだ。



『あれ……どうなってんの…?慶音、死んでないよねテツ…、俺もう、見れないって…』



つい先ほど、咲良ちゃんのお母さんが駆け寄っていった。

本当の娘でもなんでもないのに。
あれが母親だ、あれが親だ。


俺は……あいつの親にも兄貴にもなれていないんだよ。



『っ、バッカ野郎ッッ!!なにメソメソ泣いてんだ成海くん…!!』



俺より泣いているくせに、背中をバシバシ叩いてくるテツ。



『たぶんもう保健室に運ばれてるからっ、俺たちも行くぞ!!』



こんな顔、見せられないよ。

いまの俺が会いに行ったって逆に不安にさせるだけだ。


いまの俺は、あいつにどう声をかけてやったらいいのかすら分からない。



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