このキョーダイ、じつはワケありでして。
大したことないと笑ってるけど、甘く見たらだめなんだよ石は。
石が混じった砂が高い場所から転がり落ちてくると、そこに重力が加わる。
土も木も巻き添えにして流れたならもう、車だってぺしゃんこなんだ。
石が塊になると何に変化するか知ってる?
岩になるんだよ。
『ほんとうに無事でよかった……』
心から安心した顔をして声を震わせながら妹の髪を撫でてくれる、咲良ちゃんのお母さん。
そんな姿を見ては微笑ましいと笑っている教師たち。
『…笑ってんなよ』
『え…?』
気づけば俺はまた、慶音にだけは汚い世界を見せないように隠していた。
この傷だって、もしかすると打ち所によっては致命傷になっていたかもしれないんだ。
腰や腕だったから大丈夫とか言ってるけど、もし頭から落ちていたら?
『教師ならもっと生徒のこと、ちゃんと見ろよ。なんで1番背が低い生徒じゃなく、2番目の慶音を乗せたんだ』
『そ、それはね。生徒たちの推薦でもあって…』