このキョーダイ、じつはワケありでして。
推薦?
あんなの嫌がらせでしかない。
だれが見たって分かった。
あの組体操を見ていた観客たちみんな、『あの子はたぶん…』と察していた。
いじめられてんだよ、こいつはクラスメイトに。
なのに教師には見えてないって、何なんだよ。
『たしかに今回のことはプログラムを組んだ私たちのミスでもあるから、本当に申し訳ないと───』
『ミス?』
『あっ、いや、ええと…』
ミスなんて簡単な言葉で片付けられるものじゃない。
1度失ったら2度と会えなくなるんだ。
美味しいって俺の料理を食べてくれる顔も、つらいことがあって俺に泣きつく顔だって。
にいちゃんって呼ばれることも。
あんたらのミスで俺たちの笑顔を消されるってわけ?
『もしこいつが死んでたとしても、あんたらは“ミス”で片付けるってこと?』
『そ、それは……』
『石だから大丈夫?大したことない?大袈裟?なに笑ってんだよ…、どこに根拠があって大丈夫なんか言えんだよ…!!!俺たちの両親はっ、その石で顔面つぶされて死───』
『成海くん!!!』
保健室には似合わないテツの声に、言葉は止まる。