このキョーダイ、じつはワケありでして。




「…言うわけない。みんなって、自分たちの狭い価値観で一括りにしないでもらえませんか」



咲良も天瀬も、言わないよそんなこと。



「はっ、どーでもいいけど。あたしらの場所にあんたみたいな親もいない貧乏人は邪魔なんだよ。いい加減わかって?」



玄関を開けると、真ん中に麻衣子さんと兄の靴がある。

私はいつからか端っこに脱いでいた。



『一軒家も手に入るし、嫁姑問題もないからそのぶん気楽だし、成海くんはルックスも収入もあるから最高だと思ったんだけどさあ…』



すこし前、麻衣子さんが誰かと電話をしていた。

兄ちゃんは仕事をしているみたいでリビングにいなく、彼女も私に気づいてないようで、音を立てずに階段を上がろうとした───けど。



『妹がいてね、すっごい邪魔なの。それだけが成海くんの欠点』



“私のせい”が、またひとつ追加された。

兄ちゃんはすごい人間だよ。
この世の中で私が唯一尊敬する人だ。


自分がやりたいことも夢も道も諦めて、妹のために生きてくれた。


そこまで優しいひとを、私は知らない。



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