このキョーダイ、じつはワケありでして。




「嫌なことあったらビービー泣いて帰ってくるのがおまえじゃん。だから俺も簡単に機嫌なんか直せたし……でも、とくに最近なんかは妹の扱いが分かんなくて困ってる」



急に学校やめたいって言ってくるし、無理やり彼女作らせようとしてくるし、かと思えば家に帰ってこない。

しまいには家を出てくって?

俺のほうがまだマシな反抗期過ごしてたよ───、



「それはない。だって兄ちゃん……まったく帰ってこなかったし」


「いいや。結局、最後は、ちゃんといつも帰って来てたから俺は」



これは私をどうこうするためじゃなく、自分がただそうしたかったんだなと思う腕のちからだった。



「でも慶音は1回でも出て行ったら2度と帰ってこない感じがするんだよ。…そのつもりなんでしょ」



否定も肯定もできないけれど、沈黙を置いたならそれはもう肯定になる。


だって帰ってくるなって言われてる。

正直に言って泣いてしまいたいのに、兄の背後で見守る女性の瞳の奥にある冷たさを見てしまったら。



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