このキョーダイ、じつはワケありでして。
「……兄ちゃんごめん。胴着、悲惨なことになった」
まあ悲惨なのは胴着だけじゃないんだけど、なんて似合わない冗談も言ってみる。
「…ショートヘアー、好きよ兄ちゃん」
短くなってしまった妹のガタガタボロボロの髪に指を通して、好きと言いながらも「あーあ」と落とした。
「……会えないからどうせ」
「…母さんと父さんに?」
「うん。もう、こんなの意味ない」
わかってたよ、最初から。
会えないってことは、わかっていた。
どんなに髪に願いを込めたところで、死んじゃったんだから。
「俺、おまえのなかにいつも母さんと父さんを見るよ」
「え…?」
「似てるんだよね。わりと我が道があるマイペースなところは母さん、それなのに1度決めたら猪突猛進な部分は父さん」
そんなの言ったら私だって同じだ。
兄ちゃんのなかにはお母さんとお父さんがいる。
大きな愛情で包んでくれる優しさはお母さん、私が元気ないときはユーモアを取り入れて寄り添ってくれるところはお父さん。
そうなると私たちはお互いに両親を映し合っていたことになる。