このキョーダイ、じつはワケありでして。




「……兄ちゃんごめん。胴着、悲惨なことになった」



まあ悲惨なのは胴着だけじゃないんだけど、なんて似合わない冗談も言ってみる。



「…ショートヘアー、好きよ兄ちゃん」



短くなってしまった妹のガタガタボロボロの髪に指を通して、好きと言いながらも「あーあ」と落とした。



「……会えないからどうせ」


「…母さんと父さんに?」


「うん。もう、こんなの意味ない」



わかってたよ、最初から。
会えないってことは、わかっていた。

どんなに髪に願いを込めたところで、死んじゃったんだから。



「俺、おまえのなかにいつも母さんと父さんを見るよ」


「え…?」


「似てるんだよね。わりと我が道があるマイペースなところは母さん、それなのに1度決めたら猪突猛進な部分は父さん」



そんなの言ったら私だって同じだ。

兄ちゃんのなかにはお母さんとお父さんがいる。


大きな愛情で包んでくれる優しさはお母さん、私が元気ないときはユーモアを取り入れて寄り添ってくれるところはお父さん。


そうなると私たちはお互いに両親を映し合っていたことになる。



< 279 / 315 >

この作品をシェア

pagetop