このキョーダイ、じつはワケありでして。
「でも…、いつも、みんなに顔が似てないって……言われる」
声が震えると、逆に身体は離された。
似てないって言ってくるの。
みんな意地悪ばっかりだよ。
そりゃ兄ちゃんのほうが顔も整ってるし、身長だってある。
妹の私が誰よりもそんなの知ってるよ。
「おまえってさ。俺たちのことなーんも知らない他人の意見、信じちゃってんだ?俺は何度も何度も家族だって言ってんのに」
「だって…そんな家族に縛られてるのは兄ちゃんのほう…」
「…縛られてる?どこがどんなふうに?」
心外だと言うような反応だった。
じゃあ教えてあげる。
自分で気づいてないみたいだから。
「妹なんかのために…人生棒に振って、可哀想だよ」
「…へえ。俺って可哀想なのか」
可哀想。
みんな、みんな私たちをそう言う。
でも私は可哀想じゃないことに気づいた。
ここまで頼れる家族がいて、私のことをいちばんに考えてくれる兄がいて。
可哀想なのは、本当に可哀想なのは、あなただった。