このキョーダイ、じつはワケありでして。
「なにこの状況…」
「ね、ひっどいでしょ」
それはもう派手派手な3年女子に挟まれている、緒方 志摩。
そこまでは別にいい。
本人がどんなに先輩女子に引っかかれようが叩かれようが、知ったことではない。
むしろもっとやれ。
そうではなく、そいつに私はがっしりとホールドを決め込まれて逃げ場ナシってところが大問題で超絶めんどくさいのだ。
「ちょっと…!あんた志摩のなんなの!?」
「なんでそんなに近いのよ…!!距離感おかしいでしょ!!」
ほーらこうなる。
だって逃れようとしても無駄にちから強いんですもん、このひと。
「さあ、ご主人様を守って。いける?」
微かな香水の匂いと一緒に、思ったより甘い声が耳元に届いてきた。
背中を隠す私の黒髪を慣れたようにさらっと退かしながら。
「……だれがご主人様ですか」
「もちろん俺」
ここで断るほうがめんどくさいこと。
そもそも「断る」なんて選択肢など最初から用意されていないからこそ、あんな脅しメールがきたんだ。