このキョーダイ、じつはワケありでして。




その頃から兄と親睦の深い男は、必ずそんな武勇伝をあたかも自分の自慢話のように今でも繰り広げてくる。

根っからの喧嘩好きだったらしく、今は一掃されたように見違えてはいるとしても……だ。


万が一ってことがある、そっちの不安のほうが明らかに大きい。



「───四宮」



そんな日の放課後、部活おわり。

更衣室へ向かおうとした私は、おなじ胴着姿のクラスメイトに名前を呼ばれた。


激しい練習のおかけで帯が緩まって胴着が崩れたことにより覗いた肌から、思わずパッと視線を逸らす。



「おまえさ、お兄さんいただろ」


「う、うん」


「四宮 成海さん」



どうして名前を知っているの。

天瀬からその名前が出るなんて初めてで、想像すらしていなかったのに。


まさか……、バレ、た……?


たらーっと冷たい汗が流れそうになった私とは反対に、表情を微塵も変えない天瀬 真幌は逆に怖い。



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