このキョーダイ、じつはワケありでして。
「…なんで、知ってるの」
「なんでって…わりと俺たちの界隈(かいわい)では有名だよ。大会の優勝トロフィーには必ず名前が書かれてたし」
“俺たちの界隈”とは、私たちが身を置いている空手の世界ということ。
天瀬が知っているくらいに強かったんだ…と、改めて8歳差の大きさを実感する。
両親が事故に遭ってから、私と兄はやっと兄妹になったと言っても過言ではなかった。
それまではお互いそこまで深く関わっていない存在だったのだ。
「明日、ってさ…。もしかして成海さん来たりする…?」
これは…バレてはない、パターン……?
私の両親がいないことは、中学の卒業前に1度だけ天瀬には話していた。
兄が親代わりとなって育ててくれていること、その兄とふたりで暮らしていること。
それも確か話したような気がする。
「たぶん、くるけど…」
「まじ?部活参観も?」
「うん」
「…よし」
珍しい。
天瀬 真幌がどこか気合いを溜めるように、嬉しそうな顔をした。