このキョーダイ、じつはワケありでして。




「だからおまえが成海さんの妹って知ったとき…めちゃくちゃうれしかった」



こんなにも胸がうるさいことってあるの。
落ち着かないことって、あるの。


だって天瀬だ。

空手以外には興味を示さないあの天瀬 真幌が、私の大好きな兄のことを憧れだと言って、ベタ褒めしてくれて。


私がそんな兄の妹でうれしい、って……。



「わ、私もだよ…!」


「四宮も?」


「う、うん。私も……うれしい」



天瀬がそう言ってくれて。

おなじ高校で、また一緒に空手ができて。



「そーだよな。成海さんの妹ってだけで、家族ってだけでスゲー自慢だと思う」


「…………うん」



いや、そーじゃなくて。

ちょっと違うんだよ天瀬。



「それと四宮、もういっこ」



と、なぜか雰囲気が重いものに変わった。

顧問も部員たちもとっくに更衣室へと行ってしまい、広い道場内にはふたりきり。



「…おまえさ、緒方 志摩と仲いーの?」


「よくない」



天瀬の口からいちばん出て欲しくなかった名前だ。

思い出したくもなかった名前だ。



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