このキョーダイ、じつはワケありでして。




「───ってなると、ここに代入する方式で解けていくわけだ」



授業参観当日。

クラスメイトの半分以上が苦手な数学の授業は、いつになく生き生きとしていた(主に女子が)。



「ねえ四宮さんのお兄さんって何歳くらいかな?けっこー若そうだよね?」


「いいなあ~、あたしもあんなイケメンお兄ちゃんがいたら人生楽しいのに…」


「ほらそこの女子!さっきから私語が多いぞ!」


「はぁ~い」



とか言っている担任も、私の席の近くに兄をわざわざ移動させた授業開始前のこと。


家の事情も知っている先生は、お兄さんが来てくれてよかったなあ四宮!と大きめの声で言ってきたり…。

良かったは良かったけど、さすがにこれは私も私でやりづらい。



「慶ちゃん、2回は発言ね。兄ちゃんしっかり見てるよ」


「っ…、もういーから!」



しっしっと追い返すように兄からの笑顔をそっけなく弾き返してしまって、心のなかでごめんなさい。

だってほら、クスクス聞こえてくる。



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