このキョーダイ、じつはワケありでして。
「慶ちゃんだって!聞いた?いいなあ~」
「四宮さんかわいい~!普段とのギャップすごっ」
「そりゃお兄ちゃんが来てるんだもん。普段の家みたいになっちゃうよね~」
兄も兄で楽しんでいるようだった。
ちょうど廊下側端の私の席は、すぐ隣で兄ちゃんが見守ってくれている。
前の席は咲良、うしろが天瀬という神席順。
なので天瀬も天瀬で彼にしかない緊張を感じているみたいだ。
「では解けた者から黒板に書いていってくれ。早い者勝ちだぞー」
……やばい、シャー芯がラストだった。
物をあまり持たない私は、いつだって最低限の生活。
使っているシャーペンも愛用しているひとつで、ペンケースだってそれに合わせたコンパクトなサイズだった。
そしてちょうどシャーペンのなかに入っていた芯を使い果たしてしまった今。
シャー芯ケースにすら補充分は空っぽ。
「慶音?」
トントンと、小さな声で机が小突かれる。
すぐに私の異変に気づいたようで、軽いジェスチャーで伝えると「まったく…」と、困った顔。