このキョーダイ、じつはワケありでして。




「そこまで!」


「ありがとうございました!」



もちろん高校生ともなれば男女に力量の差というものがあるため、男子は特別な防具ナシ。

女子はボディプロテクターを付けるルール。



「つぎは天瀬か」


「はい」


「天瀬の相手を新入生にやらせるのは可哀想だな…」



顎をさわりながら女子空手部を見渡す、男子空手部顧問。


天瀬はいつも先輩に混ざって稽古している。


たしかに興味本位で高校から空手をやり始めた部員もいる女の子と戦わせるのは酷な話だ。

ちなみに天瀬と仲良くなりたいがために空手部に所属した女子生徒も数人はいる…らしい。



「あの子でしょう天瀬くんって。中学のときからすごく強いって有名だものね」


「全国大会にまで行ったんですって」


「まあ、すごい」



道場の周りをちらほらと保護者が囲うなか、あまり目立たない入り口付近に立っている四宮 成海の姿があった。



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