このキョーダイ、じつはワケありでして。




小学5年生の私と19歳、まだ完全に大人とは言えない兄との生活は。

きっと温かいものだけではなくて、むしろ冷たいなかで必死に幸せをふたりだけで探り当てるようなものだった。



『周りからどう言われようと、兄ちゃんだけは慶音の家族だよ』



ふたりで生きていこう、ふたりで頑張ろう。

俺がおまえのお父さんにもお母さんにもなるから───。


たまに、考えるときがある。


そこに兄の幸せはあるのかなって。
どこに兄の幸せがあるんだろうって。

ねえ兄ちゃん、兄ちゃんの人生を窮屈にしてるのは私だよね……?



「────慶音…っ!!」



我に返ると、目の前を覆うように広がっていた影。

振り上げられた踵(かかと)がまっすぐまっすぐ私のもとへ降りてくる。


ドン────ッ!!!


私に落としてから「あ。」と、気づいたらしい天瀬。



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