このキョーダイ、じつはワケありでして。
「……すみませんでした」
「こいつも一応は女の子だから、加減ってものは必要じゃない?って俺は思うわけよ。だってまさか踵落としなんて、どう考えてもあれは反則」
「…思ったより固かったんで、…いや、責任とります。すみませんでした」
「責任とかは別に求めてないから」
保健室へ連れられた現在。
部活はそろそろ終わる時間だから、もう少ししたら顧問と部長が顔を出してくる頃だろう。
保険医不在の保健室には、私と兄ちゃんと天瀬、それからマネージャーの咲良がいた。
「慶音ちゃん痛む…?アザになっちゃわないといいけど…」
「ぜんぜんへーき。アザならいずれ治るし、問題ないよ」
「骨いってたらどーすんの。踵落ちてきたんだよ慶音。さすがに兄ちゃんもびっくりしたってあれは」
ふつう女の子の顔面に落としてくる───?
と、強調して言われるたびに肩を小さくすぼめる男子生徒がひとり。