このキョーダイ、じつはワケありでして。
あのまま私がギリギリで避けていなければ、もちろん顔面にかけて喰らっていた。
避けた先で受け切れなかった唯一の肩には痛みが残り、これが顔面だったと考えると恐ろしい。
「せ、責任……とります」
「いや責任とかは求めてないから」
何回目なの、そのやり取り。
天瀬も天瀬だし、兄ちゃんも兄ちゃんだ。
「まあ対戦させたの俺だし、俺のせいでもあるけど」
「あっ」
「俺に任せて」
ひょいっと咲良から氷袋を奪って、代わりに当ててくれる兄。
「どう?痛い?」と、様子を覗き見てはやさしく投げかけられた。
「…ちょっと痛い」
「ごめん慶音。でも試合始まって1秒での飛び蹴り見たときは、やっぱ俺の妹だなって嬉しかったよ兄ちゃん」
「…………」
ゆるすよ、ぜんぜん許す。
ぜんぶ許す。
ふたりきりだったら抱きついてたもん。