やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
けれど、こんな立派なお宅に住んでいる老齢の人が、パートの清掃員をしてるなんて意外だ。
あまりの荘厳さに少々の入りにくさを感じながら敷地内に足を踏み入れ、飛び石のある砂利道を進んだ。
庭木はきれいに選定され、雑草一本見当たらない立派な庭。普段会社の清掃をしている酒井さんからは到底イメージできない大邸宅だ。
どうしよう。お花ももっと豪華で和風なのがよかったかな。好みを聞いておけばよかった。
かなりの衝撃を受けながら玄関のインターホンを鳴らすと、まもなくスピーカーから酒井さんの声がした。
『瑠伽ちゃん、戸は開いてるから入って頂戴』
一瞬戸惑うも立派な引き戸をカラカラと開け、お邪魔しますと声をかけると、奥から酒井さんが現れた。
「いらっしゃい。どうぞ上がって」
通されたのは客間で、掃き出し窓の向こうに池のあるきれいな庭が見えた。まだ、私以外の招待者は来ていない。
「酒井さん、誕生日おめでとうございます。これ、私からのプレゼントです」
手にしていたアレンジメントを渡すと、酒井さんは目じりにしわを寄せて受け取った。