やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
「まあ、きれいだわ。ありがとうねぇ。花の中では、百合が一番好きなのよ。やっぱり瑠伽ちゃんはセンスがいいわね」
よろこんでもらえて、私もほわほわした気分になる。
「孫がもうすぐ来るはずなの。ほんとにイイ男だから、期待してて頂戴ね」
そういってウインクする酒井さんは、やっぱりいつもの彼女で少しほっとした。のもつかの間、あることに気が付いてハッとした。
豪華な邸宅、酒井という姓。もしかして、もしかしなくても……彼女は……。
「緑茶なのだけど、飲めるかしら?」
「は、はい」
ポットから急須にお湯を注ぎ、お茶を用意している酒井さんに向かって、私はおずおずと口を開いた。
「あのものすごく今さらなのですが、酒井さんは……酒井小梅さんなんですか?」
湯呑にお茶を注いでいた彼女は手をとめて、きょとんとした表情をした。
「ああ、そうよね! 私は瑠伽ちゃんに名乗ってないものねぇ」
「はい。制服の胸に付けたネームプレートから〝酒井さん〟って呼ばせていただいてました」
私は彼女に尋ねられたので名乗ったけれど、そのときは浅い付き合いにとどめるつもりだったのでフルネームを必要としなかったのが事実だ。