やり手CEOはお堅い秘書を手放さない


「ええ、そう。私が酒井小梅よ。毎年バースデーカードありがとうねぇ。手書きで心がこもっているから、毎年いただくのを楽しみにしているの」

 つい最近書いて贈ったばかりのバースデーカード。その受取人が酒井さんだったなんて、胸がざわざわと騒ぎ出した。

「……っ、でもどうして、あなたが……?」

「清掃をしていると、社内のいろんなお話が耳に入るのよ。いいこと悪いこと全部。社員だけじゃなく、社に訪れた取引先のつぶやきなんかも。とっても便利ないいお仕事よ」

 私の前に湯呑を置き、まっすぐに見つめてくる。

「働く社員たちの性根の良し悪しや、分別を知ることがあるしねぇ」

 はっきりのたまう彼女は経営者の顔をしている。

「だから今日は瑠伽ちゃんを呼んだのよ。孫を紹介したいから」

 にこっとする酒井さんは、いつも見せてくれるほわほわした表情と同じだ。

 対して私は酒井さんの思惑が理解できなくて落ち着きが無くなってしまい、胸の鼓動は激しくなっていくばかりだ。

 だって、酒井さんはCUサービスの社長なのだ。つまり……。

「失礼します」

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