推し恋〜推しと恋に落ちました〜

推し、私の前に現れる!?

「何度言えばわかるんだ…!!」

「っ、も、申し訳ありません…!」

「君はこの会社に入社してもう2年だろ!?いつまでこの成績で仕事を続けていくつもりなんだ!」



市原佳奈、24歳。
底辺レベルのOLです。

そして入社2年目にして成績はなかなか上がらず、上司に怒られている真っ只中です。


「…はあ、もういい。うちの会社に必要を感じない。…辞めるなら辞めてくれ」

「……っ」



わかってる。

こんな自分が営業職に向いていないことくらい。

昔から人と会話する事が苦手で、一人で黙々と作業する仕事に就職するつもりだったのに。

2年目に突入してもなかなか成績は上がらないし、部長には毎度毎度怒られる日々。

…でも、諦めることはできない。

この会社を辞めるわけにはいかない!

ちゃんと理由があるから。



「あ、あの…!」

「御言葉ですが、部長」


私が今日こそ部長に言い返そうと思った瞬間、爽やかな香りと共に綺麗で透き通った声が隣で響いた。


「な、なんだ…荻原」

「彼女はとても頑張ってくれています。取引先からも彼女の仕事は丁寧だと、褒めていただいております」

「荻原さん…」

「これ以上彼女に…いや、ほかの社員にも同じような事を繰り返すのであれば、僕から社長に報告させて頂きます」


荻原さんはそういうと、スーツの内ポケットから黒いものを取り出した。


「ボイスレコーダーにしっかりと、毎日記録させて頂いておりますので」


「な、お前…!上司に向かって…!…もういい!早く仕事に戻れ!」


「よかったですね、市原さん」


荻原さんはコソッと私にそう言ってくれた。

荻原さん、強すぎる…。

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