一期一会。−2−
同等の強さと言えど、格が違うだけでなく向こうの実力は本物で。

手段を選ばない非道な古立組とは反対に、日下組はきちんと状況を見て臨機応変に動いている。

…本当、何のために命を削るんだろう。

人の命は決して無限ではなく、限りがある。

組員一人ひとりに少なからず家族や大切な人がいて、失われていい命などありはしないのに。

『…抗争って、何の意味があんの』

虚しく、呟いた。

前当主で俺を引き取った朝霞さんと希月が率いる現役幹部達は日下組を打ちのめそうと躍起になってるけど。

…これで、いいんだろうか。

…組に引き取られ、居場所ができて。

良かったはずだった。

施設で誰からも必要とされず孤独に暮らすよりも幸せだと、恵まれているはずだと。

今の方が、良いと思っていたかった。

…でも、俺は、何のために強く在るのかだけが分からないんだ。

この手は、誰かを傷つけるために使っていいのか。

不正解で、間違いだらけの世界に生きてしまった俺は、今更その答えを探す術を持たなかった。



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