一期一会。−2−
絡んでくる時雨に突っ込んだら、由宇が
「それ以上はやめとけ」と止めた。
え、由宇?
由宇は、ほんの少し切なそうに顔を歪めていた。
たった、一瞬だったけれど。
何で、由宇がそんな顔するの?
兄のことは、まだ言ったことないはず
なのに…。
「とにかく行こうね」
動きたくない私の手を引いた葵は、
黄鳥高校へ向かう。
『えっ、えっ?本当に来るの?!やだ!』
ズルズルと引きずられる形で懸命に
抵抗を示す。
無理無理、3人がソウ君の代わりとか!
人選ミスしてるって!
第一、有名な他校のトップが入学式に
乱入とかできないだろ!?
他の二人は、引きずられる私を愉快そうに
傍観して歩くのみ。
くそ…っ、どいつもこいつも悪魔か!
人の話を聞かなすぎる!
『皆が来たら私目立つって!』
「大丈夫、気配消しとくから」
『その顔目立つじゃん、無理だよ!』
「はいはい、見てるだけだから。
心配しない」