貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
口を尖らせる私に,ベルトゥスと蘭華は過剰に反応した。
ふいにカイが私に接近して,顔をまじまじと見つめてくる。
鼻先がこつんと当たって,カイは蘭華に引き剥がされた。
「ってぇ。んー,リリー?」
甘く聞こえるほど柔らかく。
カイは私の名を呼んだ。
細まる瞳が既に確信していて,信じられないようでいながらも嬉しそうに見える。
私は子供に戻ったような気持ちで,うんと頷いた。
「でも,あだ名にしてもりりーだって言ってるでしょ?」
「ちょっとの発音に厳しすぎ。ふはっ,やっぱりリリーだ」
和やかになった空気を,ベルトゥスの戸惑いが裂く。
「え,ちょっと待ておい。カイ,お前いつの間に凛々彩とそんなに」
「いつの間にじゃねぇよベルトゥス·ボーン。もとは東にいたんだって話したろ? そんときの今や他人が住んでる家が,凛々彩の家の目の前だったんだよ」
なーと少年のような声で同意をもとめられて,私はええと頷いた。
「嬉しいわ。確か,商売人のお父さんに引っ付いて引っ越してしまったのよね」
前回,カイと逢ったのはたまたまだった。
暇すぎて組織をサボって旅行に来たというカイが,お腹を空かせてアンナを訪ねるという突っ込みどころの多い事件がきっかけだった。