貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
「や,めて」


1度,いや2度。

私がたまたま助けられたからといって,彼女達が味方になった訳じゃない。 

助けてくれる訳じゃない。

彼女達はその,逆の立場なのだから。



「蘭華,やめて……っ」


私の声は届かない。

あの時と同じ,映っているのは夜雅のたった1人だけ。

あなたが引き金を引く理由が,愛にあると知ってしまった。

けれど……

1人で,戦わないで……っ。

いつだって仲間とも呼べる人に囲まれているのに,どうしてこの肝心な時に寄せ付けない命令を下すの。

どうして1人で戦うことに拘るの。

蘭華の近くに,惑いながら蘭華を気にするサムがいる。

幸い深い傷は追っていないけれど,あんな風によそ見をしていたらすぐ怪我をしてしまう。

そんながむしゃらな攻撃じゃダメ。

今は蘭華が押してるけど,夜雅はまだまだ余裕そうに笑っていた。

攻撃を受けながら,口の端に血を浮かべながら。

愉しそうに嗤ってるの。

相手は,普通じゃないのよ。

攻めてきたことに,意味なんて無い。

きっとただ,退屈だった,愉しそうだった,たまたま欲しくなった。

それ以上の理由はないのよ。
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