貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
「お二人はどこで出会ったんですか?」

「え?」

「馴れ初めってやつです。作戦でも情報収集でもない本気のやつで,しかも突然同居なんて…信じられないと噂する人ばかりですよ」



本気のやつ。

曖昧な表情を浮かべた私に,サムは



「突然失礼なことを…」



と最後の一文に頭を下げた。

皆からの評価は気にしてない。

(偽の恋人)がいたら,蘭華はもう女性を呼ばないかしら。

頭には,それだけだった。

それにしても



「馴れ初め…」



そんな細かい設定まで存在しない。

どうしたら。





「でも,大事な人なのに……何であんなこと」



それを聞いて,私は何も聞かされてないのだと知る。

あんなこと,と言うのは多分。

私を何処かしらの組織との取引材料にすると言う話だろう。



「蘭華に会ったのは,ここに来て初めてよ」

「え?」

「馴れ初め。蘭華も言ってたでしょ? 私はその為に連れてこられたの。蘭華はこの大きな組織のトップだから,当初の目的通り,蘭華は私を売るつもりなの」

「そんな……俺はそこまでして安全を守って貰わなくても!」

「分かってるわ。ありがとう」



私がそうサムに微笑むことが出来るのは,これから1年の間,自分が取引に使われることはないと知っているから。

心配してくれて,ありがとう。

未来の話をするわけにはいかないから,言葉を飲み込んで。

私はただ微笑んだ。
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