干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「俺は結局、父親と一緒だった。汚い手を使う事に慣れ過ぎてしまっていた。こんな俺が会社を変えるなんて、最初からできっこなかったんだ……」

 雅也の組んだ両手は、テーブルの上で小刻みに震え、下向きに流れた髪が揺れていた。


 ――あぁ。あの時と同じだ……。


 展示会のバックヤードで見た、弱々しく揺れる雅也の髪を思い出す。

 みんなそれぞれの状況で、懸命にもがいている。


 ――私はどうしたら、水上さんを励ますことができるんだろう。あのSNSの様に……。


 その時、美琴の頭に副社長の顔が思い浮かんでいた。

 副社長はいつでも、美琴の事を優しく見つめて背中を押してくれた。

 自分にも同じことができるだろうか。


「そんなこと……そんなことない!」

 美琴は力強くそう言うと、雅也の手の上に自分の両手を重ねる。

「水上さんなら変えられるって信じてます。私なんかの力がなくっても、トータルを新しく変えていける。あなたにはその力も才能もある。水上さんならできます。だってあなたは、とても優しくてそしてすごく強い人だから」


 美琴はそう言うと、ありったけの笑顔を向けて頷いた。

 今の自分にできる最大のエールを込めて。
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