干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「当然だろ。そもそも……美琴ちゃんには俺が話した」

 健太は口ごもりつつ、小さな声を出す。

「は?! いつ?! 何で話すんだよ!」

 俊介は、バッと立ち上がると健太の前まで歩み寄り、ぐっと肩を掴んだ。

「しょうがないだろ。他から噂で知るよりは、事実をちゃんと伝えるべきだって思ったんだ!」

「美琴は一言も、そんな事俺に言わなかった……」

「言えるわけないだろ。お前自身から聞いてないんだから」

俊介はぱっと健太から手を離すと、扉に向かって歩き出す。


「どこ行くんだよ!」

「美琴の所に行ってくる」

「俊介! 待てよ!」

 健太が走って追いかけようとしたちょうどその時、デスクの上の内線が鳴った。


「はい! 副社長室!」

 健太は目で俊介を追いながら、チッと舌打ちをして受話器を耳に当てる。

「俊介はいるか?」

 電話の相手はタイミング悪く社長だ。

 健太は、慌てて取り繕うように咳ばらいをした。


「あ、えーと、ちょっとだけ席を外してます」

 健太が曖昧に返事をすると、大きなため息が向こうから聞こえてくる。

「俊介の奴、由紀乃さんの事をほったらかしにしているようだな。今、由紀乃さんがこちらに来られてるんだ。そっちに行くとおっしゃってる。ちゃんとお相手するように、俊介に言っておけ」
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